説明
『わたしたちの停留所と、書き写す夜』の主人公は40代で未婚の女性。両親と、夫の暴力から逃れて来た妹とその二人の子供という6人家族。両親も妹も外で働いて稼いでいるため、6歳と4歳の子供の世話と家事はすべて「わたし」がしています。その果てしないケア労働に追われる中で、詩人になるという夢も、恋人とのささやかな幸せも諦めて生きています。誰かがやらねば生活は成り立たない、けれど報酬もなければ、評価も感謝もされないケア労働をすべて終えた深夜のわずかな時間、好きな詩をノートに書き写すことでかろうじて自分を取り戻していた主人公でしたが……。
この小説は、自分の行き先を自分で決めること。自分が自分の人生の主人公になることは思いのほか難しいことだと、教えてくれます。作中の「わたし」のように置かれている状況や、巡り合わせもさまざまで、いますぐに行動に移せないこともあるでしょう。個人の自由な決定を邪魔するものは社会からできるだけ取り除いていくべきです。しかしたとえ困難が大きくても、最終的には自分の人生を決めるのは自分しかいないということも忘れてはいけないと感じました。
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ケアはしんどい。ケア的な労働に従事している自分以外の全ての人は、自分の時間を自由に使っていると思える。一方で自分には、自分の好きに使える時間がほとんど、あるいは全くない。これがきつい。
わたしの言葉を、
わたしはまだ取り戻せるだろうか。
40代未婚の「わたし」は、老いた父母やDVを受けて実家に戻ってきた妹親子のケア労働に果てなく追われ、詩人になる夢も「あの人」とのささやかな幸せもすべてを諦めて生きている。一日の終わりに、好きな詩を筆写することだけが自分を取り戻す時間であった「わたし」が、それすら失ってしまう前にとった選択とは――。
韓国フェミニズムのうねりのなか生まれ、いま「停留所」に佇むすべての人におくる、真に大切なものを静かに問いかける「人生小説」。
*****韓国読者から共感の声続々! ******
(オンライン書店レビューより)
「主人公の状況に息が詰まった。応援してしまう」
「誰かが私の物語を、代わりに書いてくれた気がした」
「慣れようとしても慣れることのできない家事や介護を引き受けている人なら、
思わず涙が出そうなこの物語。無限に共感できる」
「ほんの二、三時間でいいから自分として生きられる時間が欲しかったあの頃。
そんな時期に耐えている、すべての女性たちへの叫びのような物語」
「読んだあとで恋人の性別を知ってもっとせつなくなった。そのプロセスも含めてこの作品が大好き」
「主人公のすべての選択を、応援したくなる本。みんな、幸せになろう」
「家庭でも社会でもひたすら〈わたし〉でいつづけられない。
そう感じる人だけが理解できる、わからない人には絶対に共感できない物語」
「家事の責任を負いながら、誰にも言えない悩みまで抱え、
大学進学も家の事情に合わせた自分を慰めてくれる小説」
「周りや世間を喜ばせるために生きなきゃならないんじゃない、
自分がうれしいときにはじめて、自分をとりまく世界は完全なものになる。そんなことを教えてくれる」
著者略歴
キム・イソル【著】
2006年『ソウル新聞』新春文芸に短篇小説「十三歳」が当選して作家活動を始める。短篇集『誰も言わないこと』『今日のように静かに』、長篇小説『汚れた血』『幻影』『線画』『私たちが安堵しているあいだ』がある。第1回ファン・スンウォン新進文学賞、第3回若い作家賞、第9回キム・ヒョン文学牌を受賞。
小山内 園子【翻訳】
NHK報道局ディレクターを経て、延世大学校などで韓国語を学ぶ。訳書にク・ビョンモ『破果』『破砕』(岩波書店)、カン・ファギル『別の人』(エトセトラブックス)、『大丈夫な人』『大仏ホテルの幽霊』(白水社)、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ』『失われた賃金を求めて』(すんみとの共訳、タバブックス)など、著書に『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』(NHK 出版)がある。




