説明
文学紹介者として日々執筆活動そしている著者は、潰瘍性大腸炎や腸閉塞などの難病を患い、激しい痛みに耐えながら生きてきた人です。痛みの何が辛いかと言えば、もちろん痛いことですが、一番はそれが周囲の人になかなか理解されないことだといいます。確かに痛みと一言に言ってもさまざまなものがありそうです。もし自分がどこかに酷い痛みを抱え、病院で診てもらおうという時、医者の先生に「どのように痛いんですか? どの程度痛みますか?」と尋ねられて、正確に伝えることは案外むずかしいのではないでしょうか。どんなに言葉を尽くしても、間違いなく伝わっているかどうかの確証は得られない。
こうして痛い人と痛くない人の間には断絶があるのですが、両者の間にあってその溝を少しでも埋められないかというのが本書の試みです。その時筆者は文学の力を借ります。文学は簡単には他者に伝わらない個人的な体験ををどうにか言葉にして、それを掘り下げ、さらに他者と共有し普遍的なものへと近づけていこうとする営みだからです。




